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ズートホーン00のこれからどうスラッヂ

「これからどうする?」の土佐弁「これからどうすらぁ?」とMy Favoriteロックンロールバンド「ザ★スラッヂ」をかけて、一時どこかで流行った言葉。そんな、将来への不安をこじらせたような物言いをいまも引きずる、たっすい(頼りない)ブログ。

福冨陽子『木下闇に風の吹く』を読んで

 あらためて「文芸栃木」(栃木県芸術祭70周年記念号)を読んでみました。巻頭に、生きがい創造舎メンバーである福冨陽子さんの小説部門最高賞作品『木下闇に風の吹く』が掲載されています。
 この作品は若手編集者カオルと、放浪癖があり気難しい編集者泣かせの女流人気作家・薬谷サキの交流を描いた中編。約1万字というがやはり読みごたえたっぷり。「木下闇(このしたやみ)」とはこの作家宅の別名。俳句などでは夏の季語で、強い日差しが降りそそいでも木々の下は鬱蒼として暗いという意味だそう。カオルは週の半分ほどはこの木下闇に詰め、他社の編集者からは愛着を込めて「闇守り」と呼ばれる。カオルは親との死別、恋人との別れなど、まだ自分で解決できない過去を持つが、サキはそんなカオルの気の混乱を出会った瞬間から見抜き、心を計るかのような問いかけ、スリリングな対話が展開される。単にサキがカオルに同じ匂いを感じたわけではなく、サキはまるである能力を持っているかのようにカオルの心情を丁寧に汲み取り、預言者のように言葉を差し出すことで、その混乱は徐々に浄化され、カオルの中の「黒い塊」はゆっくり溶解していく。そして、その過程で作者もカオルという登場人物を借りて、書くことで何かを一つひとつ手放していくような開放感も感じられる。そんな構造もこの作品の魅力。サキは木下闇で小説を完成させるや、放浪癖が首をもたげカオルに別れを告げる。ふたりの濃い時間がうそのように、一瞬の疾風のように去っていくサキ。でもそこには木下闇の澱みを切り裂くような、爽やかな風が吹いている。(生きがい創造舎・刈谷吉見)



『木下闇に風の吹く』をお読みになりたい方は、「市民活動グループ 生きがい創造舎」(028-601-8251)までお問い合わせください。「栃木県文化協会」(028-643-5288)でも入手可能です。

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